ここ数年の新日本プロレスの抗争の中で最もファンを二分した争いは、2019年のイッテヨンに向けて行われたケニー・オメガと棚橋弘至の『イデオロギー闘争』でしょう。
IWGPヘビー級王座を超えて、どちらがプロレス界の未来を担うのかを問われることになった平成最後の大一番。
超人的な身体能力による「アスリートプロレス」のケニーと、エルボー一発だけで観客を引き込む「王道プロレス」の棚橋。
ファンは『ケニー・オメガと棚橋弘至のプロレス、どちらのプロレスを支持するのか?』を否応なしに問われることとなり、イッテンヨン直前の盛り上がりに比例する形で、見届けているファンのメンタルをズタボロにする地獄のような抗争でした。
結果ケニーは敗北。当時保持していたIWGPヘビー級王座を明け渡すことになったケニーは、翌日のイッテンゴに姿を現すことはなくそのまま新日本を去ることになりました。
結果的にこの棚橋との試合がケニーの現時点でのラストマッチとなっています。
イッテンヨンの生観戦でケニーの敗北というショックを受けた後、特リンでとったイッテンゴにケニーはおろかELITEのメンバーが誰も出場しなかった絶望は今でも忘れません…
なかば新日本と新日本プロレスファンの間でタブー視されているこの抗争。ケニーも棚橋もこの試合について言及を避けているように感じています。
しかし、ケニーがウィル・オスプレイとのIWGP USヘビー級王座への挑戦を表明した今、スターダムとの合同興行についての感想を語っていた棚橋弘至。
自身のPODCASTにてとうとうケニーの新日本プロレス復帰に対する心境を語りました。
ケニーの新日本復帰について棚橋の見解
棚橋弘至:あれ(ケニーとのイデオロギー闘争)はね、思い出したりすると双方のファンの心が痛くなるような空気感のあった試合なので、あまりみんな触れようとしないんですよね。あの試合を思い出して語らないというか。
ヒリヒリ感が勝っちゃってね。そのケニーが返ってくると。分からんもんっすね。
これがね、プロレスの良さ・面白さ!無いと思ったことがあるんですよね!
(中略)
真下さん:率直にどう思いましたか、ケニー・オメガが帰ってくるって?
棚橋:えー、ノーコメントでお願いしますw
もうね、まだまだ感情固まってないっす。でもフラットに受け止めようかなと。
ケニーの「オスプレイが新日本のパンデミックだった」発言について
真下さん:ケニー選手がどこまで本音か分からないですけど、結構手厳しいことも言っていて。
「お前の会社を救ってやる」とか「パンデミックはオスプレイなんじゃないか」とか、そういうアプローチで来るんだなっていう。
棚橋:流石ですよね。VTRも見ましたけど、ただそれはケニー側の視点であって、
100%こっちから見てそうじゃないなって視点もあったんで。
どう伸るか反るかは新日本プロレスのファンの皆様が判断するところなので。
今のオスプレイはこれから来る選手であっても、誰が来ても盤石ってイメージもあるので楽しみな試合ですよね。
ケニーのことは人として嫌いじゃない
棚橋:またね、ケニーが来るだけでヒリヒリしますね。
仮にバックステージですれ違ったとしたら僕はなんて言えばいいですか? ”LONG TIME !”って、「久しぶり!」つってw
真下さん:もしくは…会話を交わさないとか…会釈とかw
棚橋:会釈w 和ですね、和で行きますかw
あの人間関係で陥りがちな誤解だけど、
(ケニーのことは)人として嫌いじゃないんですよ。スタイルとかイデオロギーの部分とかがね。
リングを降りて挨拶するしないは、僕は別にしても良いと思うんですよ。向こうがどう思ってるかっていうね。もしかしたら向こうから「バァン!バン!バァン!」ってやられるかもしれませんしね。
真下さん:もしくはスルー…
棚橋:スルーw この年でスルーは堪えますねw学生の時のシカトなんかよりぐっと堪えると思う、なんかw
この年で、このキャリアでスルーはきついっすよw
真下さん:まぁでもね、そのあたりも含めて幻想は膨らみますよ。そのぐらいここ数年棚橋選手と対立関係にあった選手と言えばやっぱり筆頭じゃないですか、やっぱりケニー選手は。
棚橋:2019年ごろの棚橋・ケニーの周りにいた人物も、飯伏もキーマンの1人だったし、ホントにヒリヒリするというか。
ケニーと飯伏の関係もありましたし、棚橋と飯伏の関係もあって、でも棚橋とケニーは戦わざるを得ない状況で。
本当にしんどかったと思いますよ。当時のファンの人たちは。
ケニーが棚橋の発言に反応
今のケニーに対する想いを語った棚橋。
そんな棚橋の発言に、なんとケニー・オメガ本人が反応しました。
ケニー・オメガ:
誹謗、中傷、言いがかり、およびパフォーマーへの(ありとあらゆる)危害を起こす事なく、意見の違いを持つことができるとお前は言いたいわけか。これこそがタナがファンやメディアや同業者からリスペクトされる理由だ。
判断材料としておこう。
これをケニーの皮肉とみるか、純粋な賛辞ととるかはなかなか判断が難しいところですね…
ケニー「俺の最大の強みはメンタルの強さ。これが棚橋弘至が味わい深いキャリアを歩んでこれた理由」
そんなケニーですが、つい最近のインタビューでも棚橋を評価するコメントを見せています。
俺は全日本プロレスやDDTで自分の肉体の限界に挑戦してきたが、それは俺の持ち味じゃないんだ。
引用:sports illustrated
俺の最大の武器はメンタルの強さであって、運動神経じゃない。
これこそが、(棚橋)弘至がこれほど長く、味わい深いキャリアを積んでこられた理由なんだよ。
DDT・新日本・AEWと長い間ファンを楽しませるために全身全霊を込めてプロレスに臨み続けた結果、蓄積したダメージがたたりケニーは2021年11月から半年以上にも渡る長期欠場に追い込まれることになりました。
復帰して今では以前と変わりない姿を見せていますが、それまでのリハビリが如何に過酷だったかを欠場中のインタビューで何度か語っています。
そんな過酷なリハビリを経て、とケニーはイデオロギー闘争を繰り広げた棚橋に対するリスペクトを抱いたのかもしれません。
かつて棚橋とのイデオロギー闘争に敗れたケニー。
しかしながら、ケニーと棚橋のシングルマッチの成績は1対1のイーブンとなっています。
- 2016年2月14日 棚橋弘至× VS ケニー・オメガ〇
- 2019年1月4日 ケニー・オメガ× VS 棚橋弘至〇
果たして、2019年の東京ドームで止まったケニーと棚橋の時間はこのあとどうなるのか?
再び対立するのか?それとも和解して同じ道を歩むのか?
期待と妄想と幻想が止まりません…!