ケニー・オメガ インタビュー(前編)~現在の体調、過去のG1で起こった非常事態~

2021年度レスリング・オブザーバー・アワードMVPを獲得したケニー・オメガ。
現在負傷により長期欠場中のケニーですが、先日レスリング・オブザーバーのインタビューに応えました!

現在の自身の体調や、現在開発中のAEWのゲームについて、復帰した後に戦いたい相手、そしてつい先日AEWを退団したコーディについて心境を語ってくれています。

非常に長いインタビューだったので前編・中編・後編に分割!

新しく語られたエピソードもあれば、どのメディアにも明かしていなかったであろう、過去の試合で起こった出来事についても赤裸々に語っている面白いインタビューです。

前半は主にケニーの体調に関するエピソード。
新日本ではベストバウトマシーン、AEWではベルトコレクターとして世界を驚かせたケニーですが、その裏側では想像を絶するコンディションの中ファンを楽しませるために戦いを続けてくれていました。

時に傲慢、時に危険な試合ばかり、時に品がないと言われてしまいがちなケニー・オメガ。そんな彼のプロレスラー、人としての本質が見えるインタビューかと思います。

それでは、いってみましょー!!

目次

満身創痍の中、インパクト・レスリングへの出場を続けた日々

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(自身の体調について)ファンを騙したかった。ただ、間違って受け取られるのも嫌だった。
『ケニーは傷ついた人の為にちゃんと仕事をしている』なんて思われたくなかったんだよ。

みんなに負けるところを見たいと思われるようなチャンピオンになりたかったんだ。

何よりも大変な時期もあったね。インパクトに出場していた時ヘルニアがひどくなったんだ。

インパクトではナッシュビルのアリーナでファンもいない中で何度も収録が行われてた。
いつも試合しているわけじゃなく毎週何かしらの形で出演していたけど、アプリ向けの特番で6人タッグをやるようになったんだ。

テレビで6人タッグやタッグマッチをやって、翌日はPPVの試合、その翌日にはまたテレビの収録で、そこに1試合あって、多くの乱入、インタビュー、プロモが入ってくる。

乱入する度に、何か尖ったものでお腹を突かれるような感覚に襲われたのを覚えているよ。

スコット・ダモーレ※注 インパクト・レスリング副社長が「ケニー、さっきの君はまるで95歳の老人がリングに向かって走っているようだったよ。セグメントを全部カットしなきゃね」と後で教えてくれたんだ。あれは酷かった。

走って駆け込んでのリングインは無理で、まるでウォークインだった。
もうアドレナリンも出なかったんだ。痛みしか感じないところまで来た。もうおしまいだよ。

そのことはみんなに知らせたよ。IMPACTとトニー(・カーン)にもこう伝えた。
「俺は求められれば必要なことはなんだってやれる。でも、本当にそれをプッシュする瞬間を選択する必要があるかもしれない。それを続けていたら、それがいつかできなくなるようになってしまう」ってね。

現在の自身の体調について

2月までに復帰したかったが楽観的すぎたかもしれない。正直厳しい。

もちろん大きな問題があったとか、何かひどく悪いことが起こったわけじゃないんだ。

ただ、予約を取ろうとしたり物事を解決しようとした時は「電話をすれば明日には診察してもらえる」と思うものだけど、実際には待ちの行列が出来ていたり他の合併症の影響で再診の予約が必要になったりするんだ。

しかも、コロナの影響でせいで全部のスケジュールが2週間遅れになってしまってね。
そのせいで、予約が間に合わず再予約する必要があったりして時間がかかってしまっている。
回復のプロセスを踏むうえでその部分はいつも本当にぐだぐだだ。

でも、軌道には乗っているよ。時間が経つにつれて少しずつ良くなっているし大きな処置の必要もない。トレーナーと一緒に負傷箇所の周辺を強化する為の適切なリハビリを行うだけさ。

最近のトレーニングで得た大きな収穫の一つは、パフォーマーやアスリートとしての自分の強みに寄りかかりすぎていたのを知れたことだね。

長年にわたって、生まれ持った強さや発達させすぎた能力があるけれど、そういったものに頼りすぎていた。

膝がダメ、首もダメ、右膝はパワーが落ちている、いろいろなことが起きている。
そういったものをどう補うか、その辺りをどう強化すれば、より安定した強い肉体を作れるのか?

それを確認していくのは実に馬鹿げたプロセスだ。「ああ…ここが強い分、隣接するここの筋肉がひどく弱くなってるのか…情けない…」と、いつも笑ってしまうよ。
でも、新しい動きを一から学んで、気付けなかったら完全に衰弱していたであろう問題を修正できるのは実にいい気分だ。

トレーニングは順調さ。膝や首、ヘルニアの治療が終わった後、以前よりずっと動けるようになって10年前と同じような姿を見せられたらいいんだけどね。

ヘルニア治療について

ヘルニアは、今すぐにでも治したい病気だ。

医者からは「臍帯ヘルニアはいずれ本当に悪くなるからいずれ治療しなければならない。でも今は放っておいても大丈夫」と言われることもある。
でも復帰した後に何かの拍子で大きく裂けてしまって、腸が飛び出してくるのなんて嫌だ。
せっかく休んで戻ってきたのに「ごめん、今から別の手術を受けるんだ」なんてことになったら最悪だからね。

今すぐにでも治したいよ。歩き回れるようになるには5日ほどかかるが、腹部への衝撃やムーンサルトの失敗、両足での踏みつけなどは6~8週間はかかると思う。もしかしたら治癒力が働いて早くなるかもしれないし、わからないけど、その時は医者の言うことを聞くしかないね。
実は今のところこれが一番回復に時間がかかりそうなんだ。8週間が過ぎたぐらいで復帰できると思う。

その間にいろいろな膝の治療が控えている。中には最先端の…本当に話していいのかわからないようなクールな実験的なものもあるんだ

2017年G1Bブロック最終戦 オカダとの試合で起こった非常事態

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バカバカしいと思われるかもしれないけど、できるだけ正直に率直に話がしたい。
でも、めまいの症状が慢性化してしまったときのことはよく覚えているよ。

内藤と優勝決定戦で当たった時のG1のブロック決勝戦の時のことだ。
オカダのドロップキックを食らったんだが、それはほんとにたまたま起こってしまったんだ。

オカダは誰もが知っているように高くてきれいなドロップキックを繰り出す。ただ、彼はドロップキックを当てた後の着地の時に、俺の側頭部に膝を落としてしまったんだ。

彼はムーンサルトの様な動きをしながらドロップキックをするけれど、俺は彼の下に落ちたところに、さらに彼の膝が落ちてきたんだ。
その時何か引っかかったような感覚があった。でも何かは分からなかったし、試合を終えたら全然問題なかった。

あの試合は大好きで、お気に入りの試合の一つだよ。

Bブロックの決勝が終わって、12時間以内に決勝に戻ってきてまた同じことを繰り返さなければならない。それはもう本当に大変でさ。疲れ果てて家に帰ってちょっとだけ眠ったんだ。

目が覚めて「よし、そろそろ行こうか」と思った。できるだけ休みたかったからいつもより少し遅く目覚ましをセットして起き上がろうとしたんだ。

でも横に倒れてしまった。バランスを取り戻そうとするんだけどそれでも横に倒れてしまって、タンスにぶつかって物がたくさん落ちて、鏡まで倒しそうになった。
「おいおい、どうなってしまったんだ」って心境だったよ。

ベッドに戻って横になった。横向きに寝たら少し回転が弱まったんだ。
この方法なら眠れるかもしれないと思い、回復することを祈りながら20分ほど少し休んだら、目が覚めたらまっすぐ歩けるようになっていた。「どうしたらいいんだろう」と思ったね。

最初は試合があったからとにかく乗り切ろうと思ったよ。まずはできるだけ長時間仰向けにならないようにした。なぜなら、それが長時間のめまいの引き金になるように思えたからだ。

だから、もし試合中受け身をとる時はその衝撃を受け止めてすばやく横に倒れるようにする。
そうすれば平衡感覚をリセットできるからね。それができないとき、どうしようもないときはどうすればいいんだろうと考えたよ。

その時はお手上げだ。もうやめよう、その日で引退しようと思ったんだ。

悩まされ続けるめまいの症状

ただ、これは本当にくだらないことなんだが、覚えていることをそのまま話そう。少しひらめいたことがあった。

日本のバラエティ番組には、バットの上に頭を乗せて何度も回転(※注 要はぐるぐるバット)して、それをやったファイターが一直線に走っていって模型にハイキックするというものがあった。

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キックボクサーのチャンピオンとかいろんな人が挑戦したんだけどが、回転の影響をまったく受けないかのようにキックをやってのけたのが桜庭和志だったんだ。

彼はぐるぐるをやった後、まったく影響を受けていないかのように蹴りを放つことができたんだ。
それを見たときに何か学べることがあるはずだと思ったよ。もしもの時のために、何か回避する術をね。

めまいの影響を受けない方法、あるいはこれに対抗する方法を学ぶことができるかもしれないというインスピレーションを思い続ける限り、きっとその方法を理解できる日が来るだろうと思えたんだ。

俺が見つけた最善策は、C1(※注 頸椎のこと下図参照)が常に正しい位置にあることを確認するための良いカイロプラクター(注 「整体」に近い、骨を矯正する手技をする人)と出会えたことだ。
C1が正しい位置にあれば、全くひどくない時は緩和される日もあったよ。

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でも、ひどい時でも自分の身体について知り、どのようなポジションを取ればこの症状がリング上でひどくなったり衰えたりしないかを知るという、精神的なトレーニングと肉体的な側面もあるような気もしているよ。


中編はこちら

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